IDC 国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表

 IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社は、国内プライベートクラウド市場予測を発表しました。これによると2024年の国内パブリッククラウドサービス市場は、前年比26.1%増の4兆1,423億円(売上額ベース)となりました。また、同市場の2024年~2029年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は16.3%で推移し、2029年の市場規模は2024年比約2.1倍の8兆8,164億円になるとIDCは予測しています。

2024年の国内パブリッククラウドサービス市場は、Generative AI(以下、生成AI)に関わる動向が活況となり、関連の製品/サービスが大きく売上を伸ばしました。また、クラウドに移行しやすいシステム(たとえば、Webシステム、パッケージアプリケーションソフトウェアを活用したシステム)のクラウドマイグレーションはピークを過ぎたものの、レガシーマイグレーションやスクラッチ開発したシステムのクラウドマイグレーションの本格化が見られました。さらには、生成AIの活用に限らず、企業のデジタルビジネスの実践を目的とした投資も活性化しました。

今後の国内パブリッククラウドサービス市場は、クラウドマイグレーション、クラウドネイティブ化、生成AIの活用、デジタルビジネスに対する投資の拡大によって、高い成長を継続するとIDCは予測しています。生成AIの活用では、生成AI機能が組み込まれたSaaSが提供されており、すでに生産性ユースケースでの本格導入が始まっています。生産性ユースケースには、「翻訳」「ドキュメントの要約、キーワードの抽出」「コンテンツ作成支援」「プログラミング支援」などがあります。一方、ビジネス機能ユースケースは、データの準備やプロセスの可視化/標準化などの課題が多く、先駆的な企業が概念実証を行っている段階となっています。

2024年はベンダー各社のAIエージェントに対する取り組みが加速した年となりました。AIエージェントは、人間の代わりに自律的にプロセスを判断して、外部のシステムを活用しながらタスクを実行する特徴を有しています。そのため、AIエージェントは生産性向上だけではなく、ビジネスプロセスの自動化を可能とし、生成AIのユースケースを飛躍的に拡大します。AIエージェントは、SaaSとして提供されることが多いAIアシスタントとは異なり、ユーザー企業が既存アプリケーションや社内データを活用してシステムを構築します。現在、ベンダー各社は、開発環境(AIエージェントビルダーと称されることが多い)、データプラットフォーム/ナレッジベース基盤の整備、導入支援サービスの提供および強化を行っています。今後、AIエージェントの発展が、ビジネス機能ユースケースの普及を促進するとIDCはみています。

国内市場において、パブリッククラウドサービスは普及し、その用途もIT/業務の効率化から、デジタルビジネスの実現へと拡大しています。このような中、生成AIが登場し、この動向を加速しています。また、ほとんどすべてのベンダーが生成AIに関連する製品/サービスの開発/提供、エコシステムの拡充に注力しており、ベンダー間の競合状況の激化に加え、協業状況が複雑化しています。「ベンダーはユーザー企業の業務変革を支援すると共に、AI Everywhere(どこでもAI)時代における競合優位性を示すためにアーリーアダプターに対するアプローチの強化とコミュニティの活性化を図るべきである」と、IDC Japan株式会社 Software & Servicesのリサーチディレクターである松本 聡 は述べています。

今回の発表はIDCが発行したレポート「国内パブリッククラウド サ ービス市場予測、 2025 年~ 2029 年 」にその詳細が報告されています。本レポートでは、国内パブリッククラウドサービス市場の概況や動向を分析し、セグメント別に2025年~2029年までの市場予測をまとめています。

出典:国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表