【開催報告】CSPAステップアップフォーラム2025
今年も、CSPAステップアップフォーラム2025が、福岡、名古屋、大阪、東京の4か所で開催された。
各会場での開催後、特別講演後について他会場の内容も知りたいという意見を多くいただいており、テキストでの報告となるが、ここにお届けする。
まずは、福岡会場の内容を紹介する。
| CSPAステップアップフォーラム2025 対談報告(福岡編) 福岡会場では、今野製作所の今野社長と、とりわけ中小企業におけるAI活用について意見交換を行いました。長年ITカイゼンに取り組まれてきた今野社長ならではの、実践的かつ本質的な視点から、AI導入の基本を学ぶことができました。 以下に、対談の中での主なポイントをご紹介します。 1.過去の知見を活かすAI活用 今野社長は、AIに対して「蓄積された事例やノウハウを引き出し、現場対応に活かすツール」としての期待を語られました。 報告書・標準書・事例などの過去資産をAIが活用できれば、社員の技能継承や能力向上につながる。 AIは「知識の橋渡し役」として、現場力を底上げする可能性がある。 2.人材育成と伝承の重視 AI導入が進む中でも、「人を育てることが何より大切」と強調されました。 少人数でも長く働ける人材の育成が重要。 「AIに一度伝承させるが、最終的には人が成長しなければならない」と、人間主体の成長を重視。 「最後はやっぱり人間だ」という言葉に、AIと人の共存への展望が込められている。 3.データ整備の重要性 AI活用の前提として、正確なデータの整備が不可欠であると指摘されました。 生産・販売などの基幹データが整理されていなければ、AIによる分析は機能しない。 「不正確なデータでは意味がない。まずは正しいデータが記録される仕組みづくりが必要」。 4.若手への期待と世代交代 AIの進化に対し、自身の限界を感じていると率直に語られました。 「AIの時代は若い世代に託したい」という思い。 社員全員がAIを“自分事”として使えるか、対話法を習得できるかが今後の課題。 いまは試行錯誤の段階で、若手の挑戦に期待が寄せられている。 まとめ AIを「過去の知見を活かすツール」として捉えつつ、「人材育成」「データ整備」「世代交代」といった本質課題への深い洞察が得られた対談でした。中小企業がAIを導入する際の指針として、多くの示唆をいただけたと思います。 |
次に名古屋会場の内容を紹介する。
| CSPAステップアップフォーラム2025 対談報告(名古屋編) 名古屋会場では、浜野製作所 浜野会長と、とりわけ、産学官連携、スタートアップ企業育成についての意見を興味深く拝聴させていただきました。 長年、墨田区にあって先進的な連携に取り組まれてきた浜野会長ならではの、実践的かつ本質的な視点から、その基本を学ぶことができました。 以下に、対談の中での主なポイントをご紹介します。 1. 産学官連携・オープンイノベーションの本質 (1)形式的な連携の課題と真に有効な接点 形式的な連携の限界:大学との公式な連携協定を締結した場合では、提供される研究リストが必ずしも現場の実用性に結びつかず、表面的な活動に留まってしまうケースが多いのが現状です。組織対組織ではなく、結局、人と人との信頼あるつながりが不可欠だ、と述べられました。 (2)真に有効な連携の創出 真に価値のある連携は、公的なルートを経由するよりも、むしろ現場の具体的な課題や研究ニーズ(例:環境問題の研究からEV開発へ発展する研究室からのご相談など)といった、有機的な接点から生まれる、という重要なご指摘をいただきました。 2. スタートアップ支援の成功要因と自立促進の原則 (1)「高い成功確率」を支える厳選と自立支援の徹底 高い成功確率の背景:支援されているスタートアップの成功率は「約半分」と非常に高く、一般に言われる「千三つ(ごくわずかな成功)」とは一線を画しています。 (2)厳選された対象 これは、闇雲に企業を受け入れるのではなく、すでに目的や事業進捗が明確であり、高い意欲と強い意識を持った企業を支援対象とされているためです。 (3)自立を促す支援体制 スタートアップに過度な依存を許さず、ビジネスとして対価をいただくという原則が貫かれています。資金がない場合は公的補助の申請を促すなど、スタートアップの持続的な成長と自立を最優先した支援を行っています。 ■以下、浜野会長から本配信への追加コメントをいただきました。■ 「町工場の社長の方々は、実際には人情味にあふれた優しい方が多く、頼まれると「しょうがないな、やってやるよ」といった形でスタートアップ支援を引き受けてしまう傾向があります。しかし、その支援はビジネスとしての仕組みが整っておらず、善意に基づいた個人対応に留まっていることが多いです。 社長自らが日々の現場作業に従事しているため、支援活動は夜間や休日に行われることが多く、結果として無理が重なり、継続が困難になるケースが見受けられます。支援が途切れると、スタートアップ側も再度支援先を探さなければならず、その間に「死の谷」に陥ってしまうリスクが高まります。 このような悪循環を防ぐためには、単なる支援ではなく、スタートアップ支援をビジネス全体として捉え、持続可能なモデルを構築する必要があります。Garage Sumidaの設立は、こうした課題への対応として行われたものであり、現在では10名程度のスタッフが新規事業開発を担う体制を整えています。 町工場では、社長が単独で支援を担うことが多く、人員の多くは加工や間接部門に集中していますが、Garage Sumidaでは新規事業に特化した人材を配置している点が大きな違いです。すべてのスタッフがすべての工程に関われるわけではありませんが、従業員が経営に関わる案件に主体的にコミットできるようになったことは、Garage Sumidaの大きな成果であるといえます。」 今回の対談は、表面的な成功談ではなく、真剣な議論を追求できたと思います。表面的な成功事例や講演だけでは、もはや多くの中小企業経営者の方の「心に響かない」時代になっています。その点で浜野会長のお考えの意図を共有できました。 改めて、求められている情報とは、形式的な内容ではなく、浜野会長の本質的なお考えや、率直で真剣なご意見(マジな顔での回答)を引き出し、掘り下げていく場づくりこそ、最も価値ある情報提供につながると改めて得心しました。 私たち支援者が学び、教えられた思いです。 今回の対談で得られた深い洞察を、皆様の今後の事業推進の一助としていただければ幸いです。 以上。 |
次に、大阪会場の紹介である。
| CSPAステップアップフォーラム2025 対談報告(大阪編) 大阪開催では、武州工業の林相談役と、とりわけ、中小企業のDX,デジタル化への取り組みの基本中の基本を伺った思いです。 以下に、対談の中での主なポイントをご紹介します。 1.適正利益を確保するためのデジタル化 ・数値で示す交渉力を持つこと 顧客に「なるほど」と納得させるには、改善成果やコスト構造をデータで提示することが不可欠です。単なる電子化ではなく、顧客を巻き込んだ業務変革こそが利益確保につながります。 ・公正な価格形成への転換サプライチェーン全体で積み上げ型の価格設定を行い、適正な利益を確保する仕組みを構築する必要があります。価格転嫁を一方的に押し付けるのではなく、フェアトレードの発想で公正さを証明することが重要です。 2.社員が生き生きと働くためのデジタル化 ・生産性向上と利益還元改善活動による生産性向上を社員に還元することで、働きがいと会社への信頼を高めます。 ・学びの場の整備DX委員会や勉強会を通じて、社員が主体的に学び、経営者も含めて感覚を養う環境を整えることが必要です。 ・競争から協調へ同業他社と設備やノウハウを共有し合うことで、リスクヘッジと働きやすさを両立させる「協調の時代」を築くべきです。 3.社員の知識を生かすためのAI活用 ・品質検査の高度化人間の目視検査に頼らず、AIによる自動検査を導入することで大きな不良を防ぎ、安定した品質を確保できます。 ・知識の形式知化社員の経験や判断をAIに組み込み、数値化・標準化することで再現性を高め、知識を資産化します。 ・役割分担の明確化人間は創造的な改善活動に集中し、AIやロボットには標準化可能な検査・作業を任せることで、社員の知識をより付加価値の高い領域に活かすことができます。 総括 経営者は、 ①データに基づく公正な利益確保 ②社員が主体的に学び、成果を享受できる環境づくり ③AIによる知識の形式知化と役割分担 を三本柱として、持続的成長と競争力強化を実現すべきです。 今回の対談で得られた基本認識への深い洞察を、皆様の今後の事業推進の一助としていただければ幸いです。 |
最後に東京会場の紹介である。
| CSPAステップアップフォーラム2025 対談報告(東京編) 錦正工業、永森社長との対談 永森社長のお話を、一言で言えば、 「危機を自分事として捉え、デジタルと人材の力で未来を切り拓く」でしょうか。 1.経営をどう変えるか 企業が危機に直面したとき、外部環境や慣習に流されるのではなく、自らの意思で方向転換を図ることが必要です。 永森社長は、自社製品依存から脱却し、鋳物業界の不合理な「キロ売り」慣習に挑戦しました。重さではなく「安心」という価値を提供する会社へと変革を進め、限られた資金の中でも小口投資と内製化を積み重ねて現場を改善しました。 経営の本質は「顧客に価値を届けること」であり、そのためには慣習を疑い、主体的に新しい仕組みを築く勇気が求められます。 2.デジタル化を自分事とする重要性 デジタル化は目的ではなく、経営課題を解決するための手段です。 政府支援や外部の大規模投資に依存するのではなく、経営者自身が「自分事」として取り組む姿勢が不可欠です。 永森社長は、安価なセンサーや自作のIoT機器を活用し、現場の改善を自らの手で進めました。こうした主体的な取り組みは、社員の潜在能力を引き出す契機ともなり、既存人材の力を最大限に活かすことにつながります。危機を乗り越えるためには、経営者が自ら課題を掴みにいき、デジタルを抵抗なく使いこなす覚悟が必要です。 3.AIなど先進技術への向き合い方 AIやIoTといった先進技術は、特別視するものではなく「便利なツール」として柔軟に取り入れるべきです。 永森社長は、AIを単純に「使えるから嬉しい」と捉え、抵抗感なく活用しています。重要なのは技術導入そのものではなく、それを通じて顧客に「安心」と「価値」を届けることです。 さらに、AIやデジタル技術は人材の可能性を広げる補助線であり、「人がいない」と決めつける前に、既存社員の力を引き出すことが経営者の責務です。先進技術を未来志向の産業変革の文脈に位置づけ、社会に向けて発信することが、企業と業界の持続的成長につながります。 結論 経営者に求められるのは、危機を「自分事」として捉え、デジタルやAIを抵抗なく活用し、人材の可能性を最大限に開いて価値を創造する姿勢です。支援は待つものではなく、自ら掴みにいくもの。 小さな投資でも工夫と主体性があれば、企業は変革できる,と強く語っておられたのが印象的でした。 |
なお、このイベントでは、生成AIについても学べた。講演内容を、講師からのコメントで紹介する。
| ChatGPTをはじめとする生成AIの登場で、ビジネスの常識が大きく変わろうとしています。「便利そうだが、日々の業務にどう活かせばいいか分からない」「少し使ってみたが、期待外れだった」「情報漏洩が怖くて、本格的な導入には踏み切れない」。多くの中小企業経営者が、大きな可能性を感じつつも、同様の課題を抱えているのではないでしょうか。 本講演では、そうした疑問や不安を解消し、具体的な一歩を踏み出すための羅針盤を提示します。まずは、身近な業務で明日からでもコストをかけずに実践できる生成AIの具体的な活用術を事例を交えてご紹介。単なるテクニックだけでなく、中小企業が陥りがちな失敗例や情報セキュリティ対策の要点も解説し、「攻め」と「守り」両面からのAI活用を支援します。 加えて、生成AIの進化の先にある、AIが自律的に複数の業務を遂行する『AIエージェント』の時代を見据え、今考えるべきこと、そして備えるべきことをお伝えいたします。 講師:FP Supporters株式会社 代表取締役 青木 洋輔 氏 |