「経済安全保障重要技術育成プログラム」のハイブリッドクラウド利用基盤技術の開発で新たに3テーマに着手
ハイブリッドクラウド環境の利便性とセキュリティ面のさらなる向上を目指す
NEDOは経済安全保障を強化・推進する観点から支援対象とすべき先端的な重要技術の研究開発を進める「経済安全保障重要技術育成プログラム(通称“K Program”)」(以下、本プログラム)」の一環で実施する研究開発として、「ハイブリッドクラウド利用基盤技術の開発」(以下、本事業)で新たに3テーマに着手します。
本事業では、クラウド環境におけるデータの暗号化に用いる暗号鍵を利用者自身が自律的に管理できるハードウェアセキュリティモジュール(以下、HSM)技術やデータを重要度に応じて安全かつ円滑に流通させる技術、クラウド間ネットワークの経路特性を保証する技術を開発し、ハイブリッドクラウド環境の利便性とセキュリティ面のさらなる向上を図ります。また、本事業の成果は、民生利用のみならず公的利用につなげていくことを目指します。
1.経済安全保障重要技術育成プログラムについて
世界的に、科学技術・イノベーションが国家間の覇権争いの中核となっている中、日本が技術的優位性を高め、不可欠性の確保につなげていくためには、研究基盤を強化することはもちろんのこと、市場経済のメカニズムのみに委ねるのではなく、国が強力に重要技術の研究開発を進め、育成していく必要があります。
そこで、経済安全保障を強化・推進するため、内閣府や経済産業省、その他の関係府省が連携し、先端的な重要技術の研究開発から技術実証までを迅速かつ柔軟に推進するため、本プログラム※1が創設されました。
本プログラムでは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に造成された基金※2により、国が定める研究開発ビジョンや研究開発構想※3に基づき、科学技術の多義性を踏まえ、民生利用のみならず、公的利用につながる研究開発とその成果の活用を推進します。
2.事業の概要
本プログラムの支援対象のうち、「領域横断・サイバー空間、バイオ」領域の要素技術の一つに「ハイブリッドクラウド利用基盤技術」が挙げられています。
コストや利便性に優れ、幅広く利用されているクラウドサービスの多くは、利用者にとってセキュリティ面がブラックボックスになっており、十分に信頼性が確保されているとは言いにくい状況です。一方、機密性の高いデータを安全に取り扱う場合は、内部構造や動作原理などが明らかでセキュリティ面がホワイトボックスなクラウドサービスが活用されています。このような中、異なるセキュリティレベルのクラウドサービス間で安全・安心かつ円滑にデータのやり取りを行うニーズがあり、それを実現するにはそれぞれのクラウドの長所を生かせる「ハイブリッドクラウド」を構築することが必要です。
このような背景の下、NEDOは「強固な鍵管理によるデータセキュリティ技術(HSM※4の技術開発)」、「データの保護と流通の自動化技術」、「経路特性保証型のクラウドネットワーク技術」の3テーマを新たに公募し、採択しました。
既に着手※5している「強固な鍵管理によるデータセキュリティ技術(鍵管理ソフトウェア技術)」、「半導体・電子機器等のハードウェアにおける不正機能排除のための検証基盤の確立」に加え、
- 利用者自身が鍵管理ソフトウェア技術と組み合わせて利用することで、より安全な暗号鍵※6の管理を行えるHSM技術
- 複数のデータの提供者と利用者の間でデータの機密度や重要度に応じて、安全かつ円滑にデータ流通を自動化する技術
- ハイブリッドクラウドシステムにおける通信の経路特性※7を保証し、意図しないデグレード※8などを検知して警報・抑止する通信経路特性担保技術
を開発します。ハイブリッドクラウド環境の利便性とセキュリティ面のさらなる向上を図り、本事業の成果を民生利用のみならず公的利用につなげていくことを目指します。
3.実施内容・採択テーマ
【領域横断・サイバー空間、バイオ領域(1)】
- 事業名:経済安全保障重要技術育成プログラム/ハイブリッドクラウド利用基盤技術の開発
/強固な鍵管理によるデータセキュリティ技術(HSMの技術開発) - 予算:22億円
- 期間:2023年7月~2027年3月(予定)
事業テーマの詳細と実施予定先は、以下の実施予定先一覧と事業概要資料をご覧ください。
【領域横断・サイバー空間、バイオ領域(2)】
- 事業名:経済安全保障重要技術育成プログラム/ハイブリッドクラウド利用基盤技術の開発
/データの保護と流通の自動化技術 - 予算:11億円
- 期間:2023年7月~2026年7月(予定)
事業テーマの詳細と実施予定先は、以下の実施予定先一覧と事業概要資料をご覧ください。
【領域横断・サイバー空間、バイオ領域(3)】
- 事業名:経済安全保障重要技術育成プログラム/ハイブリッドクラウド利用基盤技術の開発
/経路特性保証型のクラウドネットワーク技術 - 予算:5億円
- 期間:2023年7月~2026年7月(予定)
事業テーマの詳細と実施予定先は、以下の実施予定先一覧と事業概要資料をご覧ください。
【注釈】
※1 本プログラム
- 事業名:経済安全保障重要技術育成プログラム
- 事業期間:2022年度~2031年度
- 事業概要:経済安全保障重要技術育成プログラム
※2 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に造成された基金本基金は、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43号)第63条第1項における「特定重要技術の研究開発の促進およびその成果の適切な活用を目的とするもの」として指定基金に指定されています。※3 国が定める研究開発ビジョンや研究開発構想「研究開発ビジョン」とは、経済安全保障推進会議および統合イノベーション戦略推進会議で取りまとめられる、支援対象とする重要技術や重要技術となり得る要素技術などを示したものです。「研究開発構想」とは、研究開発ビジョンをもとに内閣府および経済産業省が具体的な研究開発の構想を示すために策定するものです。最新の資料は、内閣府ホームページ(経済安全保障重要技術育成プログラム)を参照ください。※4 HSMハードウェアセキュリティモジュールの略です。データを解読できないようにしたり、暗号化されたデータを元に戻したりするときに用いる暗号鍵の管理をセキュアに行う物理的なデバイスのことです。※5 既に着手(参考)NEDOニュースリリース(2023年6月29日)「「経済安全保障重要技術育成プログラム」でハイブリッドクラウド利用基盤技術の開発に着手」※6 暗号鍵データを解読できないようにしたり(暗号化)、暗号化されたデータを元に戻したり(復号化)するときに用いるデータのことです。※7 経路特性帯域幅や多重度など性能や耐障害性に関わる性質のみならず、経路の論理的・物理的な独立性の有無や、将来的には量子暗号通信による情報理論的安全性の有無など、データの機密度などに応じて通信路が備えるべき性質を指します。※8 デグレードソフトウェアの変更や修正による変更箇所の不具合や、変更が影響して起きる既存箇所の不具合のことです。